家事効率化の徹底、調理の最適化『勝間式超ロジカル料理』
定価:1,430円
発売日:2020年3月1日
発行・発売:アチーブメント出版
判型・体裁:A5判(20.8 x 14.8 x 1.5 cm)、192ページ
副題が「ラクしておいしく、太らない!」とあるので、あの勝間和代さんがダイエット本かと勘違いしてしまいそうです。
帯に踊る文字にも「体重62kg→50kg」とあります。
これがダイエットの本でなくて何? となるでしょう。
でも違うんですよ、もちろんダイエット本ではありません。
では、『勝間式超ロジカル料理』とはなんぞ?
ということで、詳しくみていきましょう。
目次
洗濯板からの脱却を目指す?
表紙をめくると、その答えはカバーのソデに書かれた文章にありました。
「今の一般的な料理法は、洗濯でいえば洗濯板でやっているようなもので、…(中略)…そう思った私が、料理の基本的な法則と現代のテクノロジーを調べ尽くし、研究し、超効率化したのが『勝間式超ロジカル料理』です。…」
なるほど…文章の後半にあるように、「健康で今よりもっと幸せになれる。その料理方法をお伝えします」というのが本書で掲げたテーマです。
この副題や帯のコピーはたぶん編集者によるもの。
ミスリードを招いてしまっているのがちょっと残念。
本書は、なぜか料理界においてだけ中世の時代から何一つ変わっていない、加熱による煮炊きが中心の料理法を現代のテクノロジーと最新理論を駆使し、勝間さんが培ってきたビジネススキルをプラスして新しく構築した料理方法と思考とレシピを伝えるためのもの。
あらためて整理していきましょう。
テクノロジーと最新理論を味方につける
本書は、経済評論家の勝間さんがビジネススキルを全力で注いで構築した「時間は最短、手間は最小、しかも毎回失敗なしの最高の仕上がりになる料理法」を書き記した本。
「共働きしてるから家事分担を」でもなく、「忙しいから週末につくりおきを」でもなく、「時間はお金で買う、家事代行を依頼する」でもなく、料理から片付けまでにかかる実働時間およそ90分を15分にしました、できるんです! と高らかに宣言しています。
その前提となるのは、「鍋とフライパンを手放して」「シャープのヘルシオとホットクック」や「その他調理家電を駆使」して「AIを上手に利用」しながら時間と手間を効率化するということ。
そう、家庭用スチームコンベクションオーブンである過熱水蒸気オーブン「ヘルシオ」と自動調理無水鍋「ホットクック」ありき、というところに注意が必要です。
いえ、正確に記すなら、本書のレシピはホットクックが中心でヘルシオのレシピはありません(自動調理機能があるのだからいらないしね)が、ホットクックを持っていない人向けに鍋でふつうに作る方法も併記されています。
しかし、鍋で作るぐらいなら勝間さんの本はわざわざ買わないでしょう。
調理家電に火入れを任せて、その時間は別のことに使いたい、使える、と思える人とどうぞこの思考法を共有します、という本ですから、読者を選んでいます。
思い切ったテーマ設定と言えます。
発売前から楽しみにしていた本書
では、そんな本書なぜ私が購入したのか。
ヘルシオは2004年の発売当初から話題になったのに対し、同じシャープから「ヘルシオシリーズ」として2015年11月に新発売となったものの、ホットクックは鳴かず飛ばず。
それでも我が家では、高齢になって調理がめんどうになった実家の両親にちょうどいいように思えて、さっそくプレゼントしていたんです。
がー、どうやら使いこなすことができず結局ただの置物になってしまっていました。
それで最近、実家から引き取ってきて、我が家で使うことに。
すると慣れない調理家電ですから、付属のレシピブックではない参考書が欲しかったんですね。
ちょうどその頃、2019年10月に世界文化社より『はじめての「ホットクック 」レシピ』が、さらに12月に日東書院より『毎日のホットクック・レシピ』が発売されました。
2冊も続けて出版されるとは、と当時は驚きました。
しかもどちらの本も順調に重版出来、売れ行き好調です。
(そのあたりのことはnote『料理の本の裏側』でレポートしました)
おやおや、急にどうした、ホットクック! です。
で、調べていくと、その前兆となったのが、他でもない勝間さんの一連の発言だというのがわかりました。
2017年暮れごろからブログその他でホットクックの調理実験や料理の出来を発信していて、シャープの協力の元にイベントも実施するほど。
そしてその方法論は、『勝間式超ロジカル家事』(アチーブメント出版)、『勝間式食事ハック』(宝島社)にまとめられました。
もちろん彼女が主宰するネットサロン「勝間塾」でも熱心に議論され、塾生と呼ばれる参加者による使い方やレシピの交換が盛んに行われ、じわじわとホットクックという調理器具が認知されてきた、というバックグランドがあったこともわかりました。
なるほどそういうことか。
そうした過程を経ての今回の『勝間式超ロジカル料理』の出版だったというわけですね。
蒸し料理のおいしさに驚き!
さて、前著2冊と違って、ホットクック を使った18レシピが掲載されています。
が、「たった18レシピ⁈」などと断じるのは短絡的。
この18レシピを知ってさえすればアレンジは無限になり、最低限の手間でスーパーのお惣菜よりもはるかに安く、しかもおいしい食事が作れる、と勝間さんは主張します。
味の要は塩。
それ以外の調味料はしょうゆ、味噌、酢だけを使い、砂糖などの甘みは入れない、食材の組み合わせでおいしさの幅を広げる、本当に必要なことだけ手間をかける……といったメソッドが語られていきます。
そこで私もさっそくホットクックで蒸し物に挑戦してみました。
まずは本書で紹介されている「蒸しかぼちゃ」。
うん。ほっくり。
そして、知人からおみやげにいただいたバスク産の黒豆。
歯応えが残る絶妙な蒸し加減に出来上がり、ほくほくとカリッのちょうど中間ぐらい、煮豆にはない香ばしさがあって、ぽりぽりといつまでも食べてしまいます。
さらにはじゃがいもを蒸してごくごく基本のポテトサラダにしたところ、絶品に。
じゃがいもの味が濃くておいしい。
勝間さんが本書で言うように、野菜の蒸し料理はだんぜんホットクック調理に軍配が上がりました。
以来、我が家では蒸し料理は積極的にホットクック を使っています。
共働き家庭に必須の超ロジカル料理
このように、蒸し物はもちろん煮物のように時間がかかる料理は火の前にいなくて済む、材料を揃えて入れておきさすればほったらかしOKな調理家電、忙しい共働き家庭にはありがたいことです。
何しろ勝間さんの家事効率化、最適化を目指したメソッド構築には年季が入っています。
独立されてからは経済評論家として勝間塾を主宰、また近年はご自身のLGBTを公表して発言を行うなど多方面で才能を発揮されていますが、21歳で出産して3人の娘さんを育ててきたワーキングマザー。
誰よりも家事効率化の必要性があったわけです。
実は私にとって勝間さんとは長年、ワーキングマザーのための投稿サイト「ムギ畑」のムギさんでした。こちらのほうが長いお付き合い。
ムギ畑は、まだインターネットが世界を席巻する前、パソコン通信からインターネットへ移行する時期に開設された、と勝間さんはブログに書いていらっしゃいましたが、パソコン通信の時代からムギ畑の前身が始まっていたはず。
私も時々覗いていた記憶があります。働く母親がまだまだ少なかった私たち均等法世代にとってはありがたい情報交換の場でした。
※ムギ畑は2019年1月31日に閉鎖。閉鎖を告げる勝間さんのブログはこちら。
それから23年以上経った今。
今はもっとワーキングマザー、もといワーママも育メンも当たり前の世の中になりました。
生きている以上は逃れることができない食事作りをいかに効率化するかは、もはやすべての働き世代が学ぶべき必須スキル。
本書はそんな必要に応える本です。
料理のためだけのレシピ本ではありません。
もちろんダイエット本でもありません。
食事作りに重きを置いた、家事効率化のためのレシピ本と考えるとちょうどよいと思います。
あまり料理が得意ではない、好きじゃない、つくりおきなどの面倒なことは出来るだけしたくない、という人にぜひおすすめしたい本ですね。
賢い作り手になるための参考書
最後に本の造りについて少しだけ触れておきます。
本書は前述の通り、いわゆる普通のレシピ本ではありませんので、書籍で最近増えてきたA5判の左開き(縦組み)でオールカラー。
料理の写真はごくごくシンプル。
聞けば、勝間さん宅の食器も使われているそうで、本書のスタイリストさんもできるだけシンプルなスタイリングを考えたとか。
そりゃそうですね。
家事効率化の鬼の勝間さんの本で、「映える」なんて発想はないか。
その分、男性読者も読みやすくなっていると思います。
ただですね、食事はただおいしければいいというものではない! 空間や時間そのものにも彩りがほしい! と考える向きには、本書の教えはちょっと思い切り過ぎに思えると思います。
実際に試して食べてみた私自身も、本書のレシピにプラスして、アレンジレシピにトライしてみたところでやはりレパートリーの物足りなさは否めません。
だってやっぱりせん切りキャベツも、ささがきしたきんぴらごぼうも、天ぷらも唐揚げも、そう簡単には諦めきれませんから!
でも、その他多くの料理研究家が教えてくれるレシピやテーブルコーディネートを参考に食卓の彩りを楽しむ裏側で、実は、本書で学んだ家事の効率化や最適化テクニックを駆使した食事作りができるようになったら最強ではないかと思います。
本書を読んで、ちょっとだけ賢い作り手になれたわ、と一人ニヤつく。
そういう使い方をするための参考書って捉え方をしてみてはどうでしょうか。
著者プロフィール
(本書より)勝間和代(かつま かずよ)
経済評論家。株式会社監査と分析取締役。中央大学ビジネススクール客員教授
1968年東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JPモルガンを経て独立。少子化問題、若者の雇用問題、ワーク・ライフ・バランス、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言を行う。なりたい自分になるための教育プログラム「勝間塾」を主宰するかたわら、麻雀のプロ資格取得、東京・五反田にセミナールーム&キッチンスタジオ『クスクス』をオープンするなど、活躍の場がさらに拡大中。最近では、経済と効率化の知見と実体験、研究をもとにした家電、家事のアドバイスが人気。『勝間式食事ハック』(宝島社)、『勝間式超ロジカル家事』、『勝間式超コントロール思考』(共に小社)など、著作多数。
スタッフ
装丁: アルビレオ
本文デザイン: 田中俊輔(PAGES)
撮影: 公文美和
料理スタイリング: さくらいしょうこ
ヘアメイク: 佐藤美香
校正: 株式会社ぷれす
編集協力: 茅島奈緒深
編集: 木村直子
目次
はじめに 鍋とフライパンを手放す勇気
第1章 超ロジカル料理の基礎知識
基礎1
- 鍋・フライパンを手放す
- 40代で自炊の大切さを再認識
- 労力、時間、お金を損失させる「現状維持」
- 料理家電は高いと言いながらスーパーの惣菜を買う人の怪
- 2大調理家電のヘルシオとホットクック
- オーブンや魚焼きグリル、炊飯器をもっと駆使する
- 専門店よりおいしくできるベーカリー+真空保存容器
- 食洗機が自炊のハードルを下げる
- 調理家電の付属レシピは参考にしない
基礎2
- 調味料は4種類
- 塩、醤油、味噌、酢があれば十分
- 調味料は基本「後がけ」が正解
- レシピ01 [後がけしょうゆ肉じゃが]
- Column① 持ち物の数を最小限にする効果
基礎3
- 絶対においしくなる「塩分の法則」で味付けをする
- 適切な塩分量が「おいしい」を生む
- レシピ02 [塩だけ低温スープ]
- 食材の組み合わせの原理原則を知ると「おいしい」の幅が広がる
- Column② 原理原則を知るメリット
基礎4
- 稼働時間は最長でも15分
- 本当に必要なことだけ手間をかける
- 切る作業をスピードアップ! 勝間式カットテクニック
- レシピ03 究極の時短レシピ[材料切るだけパスタ]
- レシピ04 究極の時短レシピ[材料切るだけサラダ]
- Column③ 劇的時短をかなえる最新家電
第2章 超ロジカル料理で最高に健康になる
私がいくら食べても太らないワケ
自炊を始めてからみるみる痩せた
自炊だからできる「シュガーフリーライフ」
スイーツを果物に置き換える
食物繊維は痩せ薬
- レシピ05 痩せる薬レシピ[キノコのマリネ]
レシピ06 痩せる薬レシピ[キノコとキウイのサラダ]
プロテインとサプリも飲んでいます
カレー、シチューにルーはいらない
- レシピ07 ルーなし調理[基本のカレー]
レシピ08 ルーなし調理[基本のシチュー]
レシピ09 ルーなし調理[基本の味噌汁]
Column④ 人生最大の投資は、健康
第3章 超ロジカル料理で劇的においしくなる
レストランよりおいしい、早い、安いから自炊が続く
加熱のし過ぎが料理をまずくする
なんでも驚くほどおいしくなる蒸し料理
蒸すとおいしくなるメカニズム
野菜が絶品になる蒸し方
基本の肉の蒸し方
低温蒸し 素材別温度一覧
- レシピ10 「蒸してつくりおき」レシピ[豚肉の低温蒸しハム]
レシピ11 「蒸してつくりおき」レシピ[野菜のまとめ蒸し]
レシピ12 絶品! シンプル蒸し料理[蒸しカボチャの洋風和え物]
蒸すと衝撃のおいしさに! 世界一おいしくなる大豆の蒸し方
- レシピ13 絶品! 豆のおいしさ再発見レシピ[蒸し豆シンプルごはん]
レシピ14 絶品! 豆のおいしさ再発見レシピ[豆とベビーリーフのサラダ]
レシピ15 絶品! 豆のおいしさ再発見レシピ[昆布と豆の玄米ごはん]
Column⑤ 家事も人間関係も「し過ぎ」をなくすとラクになる
放ったらかしでOK! 絶品グリル料理
手間なし、気遣いなしで、失敗無し!
- レシピ16 放ったらかしでOK! 絶品グリル料理レシピ[トマトと鶏肉の無水オーブンスープ]
レシピ17 放ったらかしでOK! 絶品グリル料理レシピ[チキンの綱焼き]
幸せを1段階アップさせる自家製パン
自家製パンをラクにおいしくつくる4つのポイント
- レシピ18 人生が変わるほどおいしい! 自家製パンレシピ[ナッツとドライフルーツの天然酵母のパン]
Column⑥ 買い物はキッチン内で完了させる
おわりに