普通でおしゃれで美味なお弁当『今日の晩ごはんと明日のおべんとう』
定価:1,430円
発売日:2017年9月26日
発行・発売:家の光協会
判型・体裁:B5変形(25.8 x 18.4 x 1.6cm)、96ページ
山脇りこさんによるはじめてのお弁当の本。
薄く焼いた卵焼きをしきりにしたこの曲げわっぱのお弁当に惚れました。
なんておいしいアイディア。
お弁当箱のふたをあけたらシナシナで食べる気もおこらないフリルレタスでキレイに飾り立てるよりも、卵焼きのしきりのほうが何百倍もいい。
と、さっそく真似してみた私です
目次
こだわりの調味料とともに
料理研究家の山脇りこさんと言えば、2014年に受賞したグルマン世界料理大賞を受賞した『ノンオイル&10分でできる昆布だし95』(2013年JTBパブリッシング刊)がまず思い出されます。
予約が取りにくいことでも有名な料理教室では、だしの教室も開催していて、ご実家が長崎の旅館で和の文化に囲まれて育ったことから本格志向の和食の人なのかしら…と思いきや、お料理修行はフレンチなど西洋料理中心です。
しかし、だし教室を開いていることからもわかる通り、味の根幹を構成する調味料、いわゆる「さしすせそ」に当たるさとう(みりん)、塩、酢、醤油、味噌については、本当にいいものをご自分の足と舌で探して歩いて見つけたものを使っているそう。
味のいい調味料さえあえれば、青菜のおひたしにたらりとお醤油をひと垂らししただけで最高の一品になる、時短料理に躍起にならなくても自然に時短になる、と。
まいにちのお弁当作りから生まれた知恵
実は山脇さん、Instagram(@yamawakiriko)でお弁当を毎朝ポストしていらっしゃいます。
山脇さんが言うところの相方(ご主人)さん用で、流行りの、いわゆるインスタ映えするお弁当とは違う、でもちょっとオシャレで、きっとしみじみおいしいだろうと思えるお弁当たちがアップされているんです。
やり過ぎない、作り込み過ぎないおいしそうなお弁当、どうやって作るんだろうのタネ明かしがこの本です。
おかずはだいたい3品程度。彩りの素敵な日もあれば、ツユ染みが素敵な茶色いお弁当もある。
うーん炭水化物多め! となったとしても、一日を忙しく過ごすであろうご主人の食事と考えればこのくらいのカロリーは必要ではないかと思ったり。
その無理してない感がとてもいい。
晩ごはんから一手間加えてお弁当おかずに
そんな山脇さんのお弁当本のテーマは、「晩ごはんと一緒に明日のおべんとう」。
ハンバーグ、焼き魚、鶏のから揚げ、肉じゃが、とんカツ、牛ごぼう煮、ドライカレー、かしわごはん(九州の味だ!)、だし巻き卵という超定番のおかずを晩ごはんとお弁当に展開する技と副菜3つ、晩ごはんと一緒に作るメインのおかずとして肉おかずと魚介のおかず。
もちろんお弁当箱に入れる時の工夫や詰め方のポイントもちらっと書いてありますが、説明してもらわなきゃわかんないようなイマドキの凝ったお弁当じゃない(←褒めてます)ので、誰にでも作れそうな安心感に満ちています。
晩ご飯の準備をしながらわざと少量を取り分けた「残しもの」で作るサブおかずは作りおきも可能。
でも超シンプルなので、すぐ作れそう。
それら副菜だけのお弁当もあるから、「作りおきを使い切らなきゃ」というプレッシャーにやられずに済みます(プレッシャー嫌い)。
朝10分で作れるお弁当もある。
この本で紹介されているお弁当は、ちまちま弁とドカ弁の間ぐらい。
いわゆる「作りおき弁当」の本のようなギョッとする量のしょうゆや砂糖ではなく、おいしいだろうなって想像できるお弁当たちです。
掲載レシピはとても多くて、155前後(お弁当とおかずだけ、副菜、すきまおかず等をすべて数えて)。
晩ごはんのおかずのレシピも揃ってしまうのだから、ぜひとも手元に置きたいお弁当本です。
制作スタッフ
- デザイン 高市美佳
撮影 山家 学
スタイリング 小坂 桂
構成・文 北條芽以
調理アシスタント 吉田千秋、玉利紗綾香、垂水千絵、高橋典子
校正 兼子信子
晩ごはんとお弁当を交互に構成
実は、この本のスタイリストである小坂桂さんとは、何度も仕事をご一緒しているので、書店で手にとって即、買うことを決めていました。
聞けば、お弁当やおかずの盛り付けはすべて山脇さんご自身の手によるものとか。
スタイリングは、お弁当らしく、包む布をイメージさせる背景だったり、素朴な木材の天板に置かれたお弁当だったり。
全体に落ち着いたトーンでまとめられていて写真が心地よいです。
でも、写真の画角、切り取り方が大胆だったりするのが意外性があって。
時々びっくりするくらい拡大された写真を使っているので、誌面が平板になりそうなところを防いでくれています。
この思い切り方が私はとても好きです。
これはデザイナーさんのディレクションでしょうか、編集者のこだわりでしょうか、山脇さんのお好みでしょうか。
本の台割的にも面白いです。
ただレシピを順に並べていくのではなく、主菜としてのおかずからのお弁当への展開、副菜とおかずのバリエーションのセクション分けなど、どこを入れ子にするか、どのおかずでお弁当の完成品にするか、サブおかずの扱いはどうするかなど、事前にきっちり決めておく必要のある構成なので、「台割り作りと打ち合わせがたいへんそう」です。
私がやったら、欲張りすぎて収拾がつかなくなるのは間違いない。
このあたりは、ライターの北條さんと編集者さん(あとがきによると新井さん?)のお話をぜひ伺ってみたいものです。
似たようなお弁当本が多い中、何回も読み込みたくなる、読むたびに発見のある本です。
著者プロフィール
料理家。東京・代官山で料理教室「リコズキッチン」を主宰。「きょうから料理上手~ビギナーズクラス」や「旬の教室」を通し、料理の楽しさを伝えている。雑誌、テレビ、ラジオなどで活躍中。グルマン世界料理本大賞2014で『昆布レシピ95』がグランプリ受賞。『明日から、料理上手』(小学館)、『いっしょに作るから朝がラク 今日の晩ごはんと明日のおべんとう』(家の光協会)など著書多数。
※本書より
目次
- ●ハンバーグのお弁当
冷めてもおいしいハンバーグ→ロコモコ弁当
→みそ煮込みハンバーグ弁当
→ブルックリン風ミートボール弁当●焼き魚のお弁当
焼きかじき→かじきのしょうが焼き弁当
→4色ごはん弁当
→かじきの甘酢炒め弁当●鶏のから揚げのお弁当
鶏のから揚げ→甘辛から揚げ弁当
→から揚げ親子丼弁当
→から揚げバインミー弁当●肉じゃがのお弁当
肉じゃが、塩味の白い肉じゃが→肉じゃが弁当
→トマト味にした肉じゃが弁当
→肉増量肉じゃが弁当●どんぶりのお弁当
ソースカツ丼弁当
牛ごぼう煮丼弁当
ほか●晩ごはんといっしょに作る お弁当のメインおかず
冷めてもやわらかい豚のしょうが焼き
梅ごま冷しゃぶ
豚の旬野菜ロール
ミルフィーユカツ
スパイスケチャップ豚
鶏手羽元の甘辛酢煮
鶏肉と根菜のビール煮
鶏手羽中のからっと揚げ焼きさばのマスタード焼き
あじフライ
たらの明太チーズ焼き
甘塩鮭のピカタ
ぶりの竜田揚げ
えびコロッケ、かにかまコロッケ
えびバーグ
甘酒えびチリ
かつおの当座煮
ほか●作りおきできる&残しもので作る お弁当のサブおかず
里いもとベーコンの直煮
ごぼうのごま煮
かぼちゃのバルサミコ煮
ごぼうとにんじんのきんぴら
キャベツのトーレン
マカロニサラダ
かぼちゃとピーナッツのサラダ
さつまいものラム風味きんとん
ほか
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