田代シェフの好きなもの『シェフが好きな野菜の食べ方』

シェフが好きな野菜の食べ方
定価:2,090円
発売日:2018年8月27日
発行・発売:柴田書店
判型・体裁:B5変形、152ページ

サブタイトルは、「まるごと、シンプルに。」

その言葉通りに、どの家庭にも常備されているような、ごくごく普通の野菜たちを使ったレシピが美しい写真とともに並びます。

そのラインナップはトマト、キャベツ、じゃがいも、アスパラガス、かぶ、たまねぎ、スッキーニ、なす、きゅうり、とうもろこし、大根、にんじん、青菜、豆。

野菜によって違いますが、それぞれに3から8のレシピ。

レシピの前に、その野菜に対するシェフの考え方や扱い方、時々昔話も語られた文章があり、さらに季節(旬)や選び方、保存の仕方、下処理の仕方という4項目もコンパクトにまとめられています。

食の専門出版社ならではの美しさと構成。

美しさとは、写真のことだけでなくて、贅沢な余白づかいも。

それぞれのレシピに添えられたシェフの独り言のようなリードがいい。

おいしそうで。

脳内味見が止まりません。
それでは、じっくりと味わっていきましょう。

目次

味の決め手はほんのちょっとの塩とハーブ

この本を手に取ったきっかけは、雑誌オレンジページが主宰する料理教室「コトラボ」で開催された田代シェフの会に参加したこと。その会場で購入しました。

田代シェフの出身地である福島県の野菜と地鶏「川俣シャモ」を使ったお料理を3品ほど教えていただきました。その中に、この本の表紙にもなっている「たまねぎのミ・キュイ」がありました。地鶏の照り焼きのガルニチュール、つまり付け合せとして登場、慣れた手つきでささっと作ってくださった。

作り方はとてもシンプル。

ひとつまみの粗塩、ほんのちょっとのオリーブオイルを入れた少量の水にタイムの枝を入れて、沸かしたところでたまねぎにさっと火を入れます。たまねぎが乳白色に変わったら火を止めて、煮汁ごとボウルに移し、ボウルを氷水にあてながら全体を混ぜて煮汁とたまねぎを乳化させる……

というものだけれど、塩と火入れの加減がまあ難しい。

半生のちょうどよいところで止める加減の見極めを慣れた田代シェフでも時々失敗するのだというのだから、繊細極まりないお料理なのですよ。

これが表紙になったのもわかる。

そのくらい、たまねぎの食感と味とに感動します。

痛いくらいピリピリするような生でもない、しっかり火が通ったおなじみのシチュウのたまねぎでもない。

たまねぎって、こんな味もあるんだ。と、なりました。

シンプルな調理法なので、家庭でも十分に作れるはず。

でも、シンプルだからこそ家庭料理には似つかわしくない気がするのです。

そうしてあちこちのページをめくると、じゃがいもとイワシの温かいサラダとか、おいしそうな焼き色がついたかぶとか、美しいグラデーションの紫たまねぎとか、鮮やかなにんじんのリボンとか、花束のような菜の花とか。

次々に現れる野菜の七変化に魅了されます。

掲載レシピについて

レシピはこれ以上ないほどシンプル。

使われている食材も調味料も、それほど珍しいものではないけれど、フランス料理らしいなと思う部分も。

例えば、シェリーヴィネガーや鴨の脂、ハーブづかいは専門料理そのもの。

最近はスーパーでもハーブ類を揃えるようになったけれど、さすがにフェンネルやエストラゴンは町のスーパーにはない。

そういう意味でも非日常のレシピではあります。

とはいえ、シェリーヴィネガーは米酢に、鴨の脂はラードに、ハーブは大葉とかみょうがとか、山椒の葉など、身近なものに変えて作っても大丈夫な気がします。

別の味わいが発見できて驚くかも。

本の味わいどころ

そんなお料理たちが見開きまたは1ページで、ときどき1ページに2レシピ入っていたりなど、レイアウトや台割が自由なのも心地よく、リズムを崩さず見せてしまう。

この台割はどうやって作ったんだろう、単調に組んでしまいがちなところをこんなふうに崩していくのね、さすがだなあ…。

いつまでも見ていられる、読んでいられる、どのページから開いても齟齬がない。

料理専門出版社の編集力と、ベテランシェフの技に惹きつけられた一冊。

家庭料理の延長線上にある料理本ではありませんが、料理が好きで、料理の本が好きという同好の士が愛でる本として、おすすめします。

著者プロフィール

田代 和久(たしろ・かずひさ)
(本書より)1950年福島県伊達郡川俣町に生まれる。高校卒業後に上京、東京食糧学校(現・東京栄養食糧専門学校)に入学・。卒業後、竹橋にあった「カーディナル」、銀座の「ブリアン」、吉祥寺の菓子店「オオサワ」などで働き、79年に渡仏。3年の滞在中に「ルーランデ」「ギィ・ザヴォワ」などで働く。帰国後、銀座にあった「レザンドール」シェフを経て、86年に「ラ・ブランシュ」を開店。

制作スタッフ

撮影   日置武晴
デザイン       福間優子
編集   鍋倉由記子(柴田書店)

目次

野菜をおいしく味わうために

  • トマト
  • トマトのサラダ
  • トマトのキャラメリゼ
  • トマトのコンフィ
  • トマトのロースト、バジル風味のきゅうり
  • キャベツ
  • キャベツのサラダ
  • キャベツのプレゼ
  • 2色キャベツのガレット
  • 塩もみキャベツ
  • じゃがいも
  • じゃがいもとイワシの温かいサラダ
  • じゃがいもと紫キャベツのサラダ
  • じゃがいもオーブン焼き、サヴォワ風
  • ポム・ランデーズ
  • じゃがいものグラタン
  • ポム・ピュレ
  • たらとじゃがいのブランダード風
  • じゃがいものスフレ
  • じゃがいもとブルーベリー、サワークリームの重ね焼き
  • アスパラガス
  • グリーンアスパラガスの塩こうじソース
  • ホワイトアスパラガス、ヴィネグレット風味
  • 2色アスパラガスのベニエ
  • かぶ
  • 焼きかぶのサラダ、かぶのソース
  • 焼きかぶのスープ
  • かぶのファルシ
  • かぶのまるごとロースト
  • かぶと黄金柑のサラダ
  • たまねぎ
  • たまねぎのミ・キュイ
  • 新たまねぎのヴルーテとブルーチーズ
  • まるごとたまねぎのジュレ
  • たまねぎとタルトのアイスクリーム
  • たまねぎのこんがり焼き
  • 紫たまねぎのロースト、パイナップル添え
  • 紫たまねぎのグラデーション
  • ズッキーニ
  • ズッキーニのソテー、ローズマリー風味
  • ズッキーニとトマトの重ね焼き
  • ズッキーニとスパゲッテイとヤリイカ
  • なす
  • 焼きなすのマリネ
  • なすのブレゼ
  • 緑なすのソテー、なすのピュレ添え
  • なすとズッキーニのココット焼き
  • きゅうり
  • きゅうりとアボカド、焼きなすのサラダ
  • きゅうりとシャインマスカットのかき氷
  • 板ずりきゅうりときゅうりのソース
  • とうもろこし
  • とうもろこしの綱焼き
  • 間引きとうもろこしのグリル
  • とうもろこしの包み焼き、ヴァニラの香り
  • とうもろこしのピュレ
  • とうもろこしのクレーム・ブリュレ
  • とうもろこしのコンフィ
  • 大根
  • 緑大根のロースト、大根のマリネソース
  • 緑大根のマリネ
  • 紅大根のマリネ
  • 干し大根のプティフール
  • 大根と金柑のグラッセ
  • にんじん
  • にんじんのグラッセ
  • 3色にんじんのリボン
  • キャロットラペ
  • にんじんのコンフィィ
  • にんじんのまるごとロースト
  • にんじんのポタージュ
  • にんじんとパンのグラタン
  • にんじんのエクラぜ、にんじんのドレッシング
  • 青菜
  • 小松菜とセルフイユのサラダ
  • 菜の花とサバイヨンソース
  • ほのかに温かいほうれん草のサラダ
  • 紅菜苔とはちみつマスタードソース
  • ゆであげスナップエンドウ
  • プティポワとキャベツの温かいサラダ
  • ラルドで巻いたソラマメのココット蒸し
  • 赤豆のピュレとメロン
  • 白いんげん豆と大根んのココット煮
  • 豆のディップ、パンクラッカー添え
  • いろいろな豆のサラダ

 

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